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しろさとinterview  ♯01【渡辺菜園】渡辺雄希さん・麗香さん

インタビュー


目次:

・高校から農業の道へ。経験を重ね、独立への一歩を踏みだす

・ナス農家として独立し実感した、農業の魅力と厳しさ

・夫婦のこだわりが育む ”ナス” の美味しさ

・季節ごとの挑戦ーナス農家の葛藤と”にんじん”との出会い

・地域とともに歩む、私たちの農業


「今、城里町で農家としての暮らしがとても楽しいです。」と語るのは、渡辺菜園の渡辺雄希(わたなべ・ゆうき)さん・麗香(れいか)さんご夫妻。

雄希さんは「城里町」、麗香さんは「水戸市」のご出身で、同じ農業系の高校と専門学校に通いました。

渡辺夫妻は、2017年に城里町に移住し、ナス農家として新規就農してから今年で8年目に入ります。現在、メインで栽培しているのは「ナス」と「にんじん」です。

そんな渡辺夫妻に、就農するまでの経緯やナス農家としてのやりがいや苦労、作物に対する思いなど、様々なお話を伺いました。



高校から農業の道へ。経験を重ね、独立への一歩を踏みだす

渡辺菜園の雄希さん・麗香さんご夫妻。城里町で「ナス農家」として新規就農した経緯を語る


――ナス農家としてご夫婦で新規就農をしてから、今年で8年目と伺いました。

おふたりで農業を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

私たちは2人とも非農家出身ですが、同じ農業系の高校と専門学校に通っていました。

私は卒業後、母校の専門学校で講師の助手として1年間勤めた後、農業法人を転々としながら、さまざまな作物の生産に携わりました。

じゃがいもやお米、キャベツの栽培に関わったこともあれば、牛乳の検査をしていた時期もあります。

農業法人から個人経営の農場まで、いろんな現場で経験を積む中で、それぞれの経営スタイルの違いを学び、とても勉強になりました。


――高校時代から農業の道を進み、さまざまな現場で経験を積まれたのですね。もともと独立を目指していたのでしょうか。

雄希さん:

最初は独立するつもりはなかったんです。

ですが、いろいろな現場で働くうちに、「自分でも農業経営したい」という思いが芽生えました。

妻の後押しもあり、独立を決意。地元・城里町で「ナス農家」として新規就農しました。


――なるほど。麗香さんは城里町の地域おこし協力隊OGとお伺いしていますが、その前はどのような経験をされてきたのでしょうか。

麗香さん:

私は専門学校で栄養士の資格を取得し、卒業後は茨城県の農業総合センター(※)で約4年間、農家の方々を対象に食品加工の指導員として勤務しました。

その後、退職して夫と同じ農業法人に勤めましたが、やがて夫婦でナス農家として独立することを決意。

城里町の地域おこし協力隊に応募し、無事に採用されました。

農業政策課の協力隊1期生として、3年間にわたり、さまざまな農家さんのもとで研修を受けました。

※農業総合センター…儲かる農業を実現するため、農業行政の柱である研究・普及・教育の有機的な連携を図り、三位一体による効果的な活動を展開する県の機関。


――麗香さんは栄養士の資格もお持ちなんですね。なぜ城里町で農業を始めることにしたのでしょうか。

麗香さん:

きっかけは、県内で開催された「新農業人フェア」というイベントでした。

このイベントは、茨城で新たに農業を始めたい人向けに、県内の農業法人や市町村、農業関連団体などがブースを出展し、相談ができる場です。

そこで、非農家出身者の農業者グループ「いばらき新規就農者ネットワーク」に所属する城里町の農家さんと出会いました。

お話を伺う中で、「城里町は新規就農者が多く、ここなら楽しく農業ができそう!」と直感し、城里町で就農することを決めました。


ナス農家として独立し実感した、農業の魅力と厳しさ

就農して3年目頃の渡辺夫妻。撮影は6月中旬でナスの採り始め。
ここから一気に成長して収穫量も増えていく。(写真提供:渡辺さん)


――城里町を選んだ理由は、「人」だったのですね。ナスで就農することは、城里町に来る前から決めていたのでしょうか。

麗香さん:

はい、ナスで就農することはすでに決めていました。

というのも、当時相談していた農業の普及指導員さんから、「新規就農するなら、初期投資が少なく、販売単価も比較的高いナスがおすすめですよ」とアドバイスをいただいたんです。

もちろん、2人ともナスが好きだったというのもあります。


――なるほど。普及指導員さんの助言がきっかけだったのですね。お二人とも城里町で研修を受けたとのことですが、どのように進められたのでしょうか。

雄希さん:

私は、「農業次世代人材投資資金(準備型)」(※)という制度を活用し、補助金を受けながら2年間の研修を行いました。その間、ナス農家さんのもとで2作分の実践的な経験を積みました。

※新規就農者の準備費用や経営安定を支援する公的制度。就農前の研修期間(2年以内)および就農後の経営が安定するまで(最長5年)資金を交付。


麗香さん:

私は、地域おこし協力隊として、約2週間ごとのペースでさまざまな農家さんを訪ねました。お米、トマト、ほうれん草、ネギなど、幅広く学び、その中で2軒のナス農家さんの元で集中的に研修を受けました。

農業経験が少なかったため、多様な作物の栽培に挑戦しながら、地域の方々とのつながりを深めることを大切にしました。


一つ一つ丁寧にナスの収穫をしている、協力隊時代の麗香さん。(写真提供:城里町農業政策課)


――お互いにそれぞれの農家さんのもとで研修をされたのですね。研修を終え、ナス農家として新規就農してからはいかがでしたか。

雄希さん:

 正直、農業を始めたばかりの頃はとても大変でした。

ナスづくりの作業は4月から準備が始まり、収穫は6月末頃〜10月末頃になります。

収穫期間中は1日も休む事が出来ません。最初の頃は全ての作業に時間がかかり、仕事が終わらず父と母にも手を借りて、夜中まで袋詰めする日もありました。

「こんなに頑張らないと利益が出ないのか…」と心が折れそうになることもありましたね。

でも、そんな時に支えになってくれたのは、妻の存在と、農業の先輩方とのつながりでした。


麗香さん:

地域の皆さんからは本当に良くしていただいています。

ナスの栽培では、同じ土地で作り続けると連作障害が出てしまうので、5年間は休ませる必要があるんです。つまり、毎年同じ面積でナスを作るには、単純計算で5倍の農地が必要になるんですね。

最初は農地が足りなくて困っていたのですが、地域の集まりに参加して相談したところ、「うちの土地、使っていいよ」と快く貸してくださったり、農機具を貸してくださったりと、多くの方に助けていただきました。

また、定期的に開かれる農家仲間の集まりでも、悩みを相談すると皆さん親身になって聞いてくださって…。

「こうするといいよ」とアドバイスをいただくことも多く、そのおかげで乗り越えることができています。


――地域の支えを受けながら、夫婦二人三脚で歩んでこられたのですね。会社員時代と比べて、独立してよかったと感じますか。

雄希さん:

はい、大変なことも多いですが、独立してよかったと感じています。

農業法人で会社員として働いていた頃は、お給料が「時間ベース」で計算されていたため、働き方に難しさを感じることがありました。

例えば、どんなに効率よく早く仕事を終わらせても、新しい仕事が次々にあるだけで、モチベーションが上がりにくかったんです。

例えるなら、私は短距離走の選手なのに、長距離走で勝負をしている感覚でした。

みんなが1日かけて消費する体力を、私は4時間で使いきっているような感じでしたね。

でも、独立してからは、決まったお給料が入るわけではない厳しさもありますが、「成果ベース」に変わったことで、やった分だけ成果が出るので、モチベーションが一段と上がりました。

また、プライベートの時間も確保できるようになり、仕事の効率化を意識し、メリハリをつけて働くようになりました。


プライベートでは、愛犬・ホップくんと一緒に夫婦で山登りを楽しむ。(写真提供:渡辺さん)


麗香さん:

私も、自分のペースで作業ができるので、時間管理がしやすく、休みたい時に休めるのが魅力ですね。

とはいえ、ナスのシーズンは本当に忙しく、休む暇もないほどです。

体力も相当使うので、自然に腹筋が割れ始めるんですよ!

農業を始める前と比べて、見た目も変わりましたし、体脂肪率もかなり違いますね(笑)



夫婦のこだわりが育む ”ナス” の美味しさ

ナスの栽培面積は約10アールで、年間約10トンを2人で収穫するという。(写真提供:渡辺さん)


――まさに ”農業アスリート” ですね!でも、自分で働くペースを決められる分、気持ちが途切れることはありませんか。

雄希さん:

正直、そういう日もあります(笑)。 特にナスの収穫シーズンは忙しすぎて、「今日は本当に行きたくない…」と思うことも。でも、収穫が遅れるとナスが大きくなりすぎて、見た目も悪くなってしまうんです。

自分の中で規格の基準があるので、どんなに疲れていても「これ以上ならせておいてはダメだ」と思うと、自然と体が動くんですよね。

まるで、ナスにお尻を叩かれているような感覚です(笑)。


――なるほど。どれだけ自分が疲れていようと、ナスの見た目には特にこだわりがあるんですね。他にも大切にされていることはありますか。

麗香さん:

ナスって実はとてもデリケートな作物で、風が吹くだけで、枝に当たって傷だらけになってしまうんです。さらに、葉っぱが多すぎると、良い実がなりません。

だから、収穫と同時に不要な葉っぱを取ったり、枝を剪定したりして、常に風通しを良くすることを心がけています。

手間はかかりますが、その分、質の良いナスが育つんです。


渡辺菜園さんのこだわりのナス。形が整っていて美しく、とても美味しそうだ。(写真提供:渡辺さん)


――ナスがそんなに繊細なんて知らなかったです。城里町の交流都市・江戸川区のグリーンパレスにナスを出品した時も、すぐに完売したそうですね。

麗香さん:

ありがたいことに、多くの方からご購入いただきました。

「美味しそう!」と一目で思ってもらえるよう、こだわって育てているので、こうして実際に手に取っていただけることが、とても嬉しいです。


季節ごとの挑戦ーナス農家の葛藤と”にんじん”との出会い

掘りたての新鮮な ”にんじん”。収穫は11月中旬〜4月頃まで行う。  (写真提供:渡辺さん)


――お客さんに「良いものを届けたい」という思いが、形になっているんですね。「ナス農家」として順調に見えますが、これまでに苦労したことはありますか。

雄希さん:

ナスの栽培自体は少しずつ軌道に乗ってきたのですが、収穫時期が夏〜秋に限られるため、オフシーズンに何を作るかは本当に悩みましたね。

これまでにナスの他にも、生姜・空豆・さつまいもなど色々な作物を試しましたし、スイカの種子採取の仕事をしていた時期もあります。

さらに干し芋作りにも挑戦しましたが、なかなか事業として安定させるのは難しくて…。

そんな中でたどり着いたのが「にんじん」でした。


――試行錯誤の末に出会った答えが「にんじん」だったんですね。

雄希さん:

そうですね。とはいえ、にんじんを作り始めたのは4年前ですが、最初の頃は本当に大変でした。

特に苦労したのが単価の低さです。せっかく収穫しても、利益がほとんど残らなくて…。

「どうしたらもっと価値を高められるだろう」と悩む日々が続きました。

そんなとき、友人であり城里町地域おこし協力隊OBの坂本さんにご紹介していただき、スーパーへの卸販売の道が開けたんです。

そこから少しずつ取引先を増やしていき、今では水戸市を中心に、約30店舗で販売させてもらっています。


ナスとにんじんの可愛いロゴマークが目印。お子さんが見つけ、親御さんが買ってくれることも多いそう


「ヨークベニマル水戸吉田店」の直売コーナー。町内では「道の駅かつら」で販売している


――30店舗も!すごいですね!スーパー以外にも、飲食店などへの卸販売はされていますか。

麗香さん:

飲食店への卸は特にしていませんが、実は、城里町にあるカフェ「K+1」さんで、私たちのにんじんを使っていただいたことがあるんです。

店主さんがにんじんケーキを作り、お客さんたちに試食してもらったところ、「とても美味しい!」と大好評だったそうで…。


カフェ「K+1」さんお手製のにんじんケーキ。
ずっしり濃厚で、にんじんの風味がふわっと香る。 (写真提供:渡辺さん)


一度、別のにんじんでケーキを作ったことがあったみたいなんですけど、お客さんから「やっぱり渡辺さんのにんじんで作った方が美味しかった」と言われたそうなんです。

後日、カフェの店主さんから「ぜひまた、あなたたちのにんじんでケーキを作りたいので、持ってきてもらえませんか?」とご連絡をいただきました。

あの時はとても嬉しかったですね。


地域とともに歩む、私たちの農業

地域の方と共に、にんじんの収穫作業をする雄希さんと麗香さん


――それは、自分たちのにんじんの価値を実感した、嬉しい瞬間ですね!

城里町で農業をしていて、「よかったな」と思うことはありますか。

麗香さん:

城里町で就農を決めた一番の理由もそうなんですが、とにかく「人」が本当に温かいんです。私は城里町で農業を始めることができて、心から良かったと思っています。

地域おこし協力隊の人も含めて、ここにはいろんな人が集まってきます。自然と人間関係が広がり、毎年新しい友達が増えていくのが、とても楽しいですね。

雄希さん:

農業は、一人で黙々とやることもできる仕事ですが、こういうコミュニティがあるのは、やっぱり心強いですね。

これまで地域の皆さんにたくさん支えられてきたので、今度は自分たちが力になれるように、城里町で新しく農業を始める人たちと一緒に、この町の農業をもっと盛り上げていきたいと思っています。


――貴重なお話をありがとうございました。この度は、お忙しい中、インタビューを引き受けていただき、本当にありがとうございました!




取材・文・写真(一部提供を除く)  関川恵実
インタビューサポート 城里町地域おこし協力隊OB  坂本裕二





〜取材後記〜

取材時のオフショット。お二人ともとてもフレンドリーで優しく、快く何でも答えていただいた。(インタビューサポート:坂本さん撮影)


取材に訪れたのは、2025年2月下旬。撮影と取材の2日間、ご協力をいただきました。


1日目は、にんじんの収穫・袋詰めの撮影と体験。

2日目は、出荷の様子を撮影し、その後インタビューを行いました。





今回、初めてにんじんの収穫から出荷までの工程を間近で拝見し、普段何気なく手に取る野菜が、農家の皆さんの丁寧な手仕事によって届けられていることを改めて実感しました。


インタビューでは、地域の方々に支えられながら、ご夫婦で力を合わせて農業に向き合う姿がとても印象的でした。



実は、城里町民へのインタビューは今回が初めて。少し緊張していましたが、お二人の温かいお人柄のおかげで、撮影からインタビューまで和やかで楽しい時間となりました。


取材を通して、城里町にはこんなに素敵な人がたくさんいるのだと改めて感じ、今後も定期的に取材を続けていきたいと思っています。


この場をお借りして、お忙しい中インタビューにご協力いただいた渡辺夫妻に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。



また、今回の取材では、なんと約250枚(!)もの写真を撮影しました。


記事に収まりきらなかった写真がたくさんあるので、次回の記事でご紹介したいと思います!

どうぞお楽しみに♪




最後までお読みいただき、ありがとうございました。